「将来に向けて、今のうちから外貨投資を」とニュースや雑誌などで見聞きしたことがあるかもしれません。実際に、外貨商品を保有する人は年々右肩上がりで増えています。ここでは、その外貨投資の必要性について改めて考えてみましょう。
家計の外貨預金残高推移
※(日本銀行「資金循環統計」をもとに作成)
日本銀行発表のデータによると、個人の保有する外貨預金は年々右肩上がりの傾向にあります。
円を持っているだけでは不安な時代に!?
「日本で生活しているのだから、円だけを持っていれば問題ない」と考える人は少なくないかもしれません。確かに、日本の経済が順調に拡大し、米ドルに対して円高が進んで行った時代には、円の価値が高まり、外貨に投資をするより円だけを持っている方が結果的に資産を増やすことにつながりました。
しかし、円高が進むにつれ、日本の製品は外国の製品に比べて海外価格が割高となっていき、競争力が落ちてしまいました。その後、企業は海外に工場を移して、現地での生産を増やすようになったため、近年は円安になっても以前のように輸出が伸びていくとは考えにくくなっています。一方で、東日本大震災以降、原発が運転を停止する中で天然ガスなどの輸入が急増し、輸入額が輸出額を上回る年も出てきました。
輸出入総額の推移(単位:10億円)
出所:財務省貿易統計より
また、2013年3月の黒田総裁就任以降、日本銀行はデフレ脱却を目指して国債や株式等を買い取り、世の中に出回るお金の量を増やしています。2014年4月の消費税増税もあって物価は上昇を始め、円は一時急激に安くなりました。さらに最近ではコロナウイルス対策のため、市中のお金の量は一層増えています。今後の原油価格の動向などにもよるでしょうが、日本経済は長い間続いてきた円高とデフレを基調とする時代から、円安とインフレという、これまでとは異なる状況に移る可能性があるという見方も出てきています。
消費者物価指数(コアCPI)の推移
出所:総務省
モノの値段が上がると円預金だけでは不安!?
まずは少額からのスタートを!
インフレは、物の価値を上げる一方、お金の価値を下げてしまうため、特に労働収入を得にくいリタイア層にとっては大敵といえます。すでにお話ししてきた通り、インフレ率が高くなると円安の原因ともなります。持っている資産価値の目減りを避けるには、リタイア後は一部を外貨に替えて、円の価値が大きく下がるような状況に備える「保険」として、外貨のまま保有し続けるという考え方も必要になってきています。
また、現役世代の人たちにとっても、海外投資は重要です。働いて得た資産を、金利が低い円預金に預けておくだけでは一向に増えてくれません。将来に向けて、長期的に資産を形成していきたい場合には、日本と比べて金利や経済の成長性が高い国々への国際分散投資が不可欠といえるでしょう。まずは少額からでも、それぞれのニーズに合った外貨投資を始めてみてはいかがでしょうか。